獣道かなにか
子供の頃、弟と友達と4,5人でいつも通る近所の山林の細道を歩いていた。ある日の事、道を進んで行くと左手に今までなかった細い道があった。子供一人がやっと通れるかといった細さのその道は、ススキのような細い茎が生茂っている中をゆるやかに曲がりくねっていて先の方が見えずどこまで続いているのかもわからなかった。
「こんな道あったっけ?」
私がそう言うと全員首を横に振った。しばし行くかどうか悩んだけれど、なんだかうっすらと嫌な感じがしたのでいつもの道を行く事にした。
後日、細道を歩いてみたがその細い道はなくなっていた。
動物が通った後で、草木が元の位置に戻ったのかもしれないなどとあまり気にしないようにしてそのうち忘れてしまった。
その道があった山林は今は住宅地となっていて行く事はできないけれど、あの日のあの道はなんだったんだろうと、ふと思い出すと不思議さと気持ち悪さとが蘇ってくる。